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第38話 席札から消えた如月

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-06-26 06:01:43
 私は指を離した。

「では、今日は開けません」

 宮野さんが、かすかに息を逃がした。

 箱の薄紙が、指を離したあとも少しだけ揺れていた。

「ただ、捨てないでください」

「……捨てません」

「それと」

 私は律を見た。

「届かなかったものを、今さら渡したことにしないでください」

 律の目が、静かに細くなる。

 律は箱へ伸ばしかけた手を止めた。

 それで十分だった。

 箱は棚の奥へ戻された。

 蓋が閉まる音は、小さかった。けれど、その音は晩餐会へ向かう車の中まで、耳の奥に残っていた。

 会場のホテルは、榊グループが保有する施設の一つだと相良さんが説明してくれた。

 車寄せには、黒い車が何台も並んでいる。ドアマンが一台ごとに頭を下げ、招待客は濡れてもいない上着の襟を整えながら中へ入っていく。

 私は、車内で膝の上に置いた手を一度ほどいた。

 深い青のドレスは、座っていると裾の重さが分かる。胸元は苦しくない。靴も合っている。宮野さんが最後まで調整してくれた靴は、歩くたびに足裏を支えてくれた。

 古い箱の中身ではない。

 今日、私が選んだものだ。

「顔色が
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